2012年御翼6月号その2

キリスト教は日本文化の一部

 古代イスラエルの民には、神の子としての身分、栄光、契約、律法、礼拝、約束、先祖、そしてキリストの誕生があった。では、他の民はどうなのであろう。聖書の登場や救い主の誕生はユダヤ人の歴史に起こっているが、神は世界のどの民も、同じ神によって創られ、同じように愛されている。従って、「どの民の歴史や文化にも、創造主なる神の痕跡を見ることができる」、という立場から世界中の民族の歴史・文化を研究しているグループがある。ハワイに住む日系4世の牧師が中心となっている「アロハ・ケ・アクア・ミニストリーズ」がその団体で、2008年に「神が日本に残した指紋」というDVDを発表した。
 それによると、宗教学において、一神教の創造神信仰説があり、人類学者や歴史学者は、世界各地で「創造神」を発見しているという。例えば、韓国のハナニム、中国のシャンティー(上帝)、エチオピアのコロ、トーゴ(西アフリカの共和国)のマウェ、ポリネシアのイオ、南米のテューパン、北米のキッソクなどが各国の創造神の名前である。特に、韓国の創造神の名ハナニムは、韓国の聖書で使われており、中国でも、中国語の聖書にシャンティーが使われている。
 日本では、日本神話(古事記―日本最古の歴史書)に登場する神、「天之(あめの)御(み)中(なか)主(ぬしの)神(かみ)」(天の中心におられる神)が日本の歴史と文化の創造神であると多くの学者が指摘する。神道の研究で学者としては最高の栄誉である紫綬(しじゅ)褒章(ほうしょう)を受賞し、東大教授であった加藤玄(げん)智(ち)博士(1868〜1947)は、「比較宗教的見地から見て、天御中主神が日本の『原始的一神教』の神であると考える根拠は、十分にあり、…その名前の意味からして、天御中主神は、天の中心におられる主なる神である。なんと崇高な神の名であろうか」と述べている。
 宇宙の創造神は一人しかおられないのであるから、各文化の創造神の名は、同じ神を指している。創造神である天之御中主神は、中国、あるいはトルコのコンスタンチノープルから、シルクロードを通って、8世紀初頭に日本に来た、キリスト教ネストリウス派の景教から来たと考える学者もいる。ネストリウス派と秦(はた)氏(し)が日本に来たという証拠は、蚕(かいこ)ノ社(のやしろ)(京都にある、天之御中主神をまつった神社、正式名:木島坐天(このしまにますあま)照(てる)御霊(みたま)神社(じんじゃ))の三本柱の鳥居や、伊勢神宮の灯篭に刻まれたダビデの星など、たくさんあるという(秦(はた)氏(し)  蚕(かいこ)ノ社(のやしろ)を建立、シルクロードを通って渡来した、古代のユダヤ系キリスト教徒)。
 天の真ん中におられる神という名前、またユダヤ教とキリスト教の断片は、西洋からのキリスト教が伝わる少なくとも1000年以上前から、日本文化の一部であった。例えば、茶道も、キリストの教えを表わすものとして千利休が完成させている。キリスト教は日本にとって外国のものではなく、日本文化の一部なのだ。

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